既刊書一覧

 
 

「第1回津谷裕貴・消費者法学術実践賞」

の受賞者決定について

 
平成29年12月14日更新


 第1回津谷裕貴・消費者法学術実践賞につきまして、選考委員会における厳正な審査の結果、受賞者を次のとおり決定いたしました。なお、授賞式およびシンポジウム「消費者法25年の歩みと今後の展望─日本の消費者保護はどこまで進み、何を目指すか」は、2014年3月27日に行われました。



■学術賞(2名)

〔受賞者〕大澤 彩(法政大学准教授)
〔対象〕『不当条項規制の構造と展開』(2010年、有斐閣)
〔理由〕わが国における不当条項規制に関する本格的な研究であり、また、これまでに研究の蓄積が少なかったフランスの濫用条項の規制に関する網羅的な検討がなされているなど、比較法的にも学術的価値が高い研究である。上記の著作後も、この分野をリードする研究成果をあげられている。


〔受賞者〕王 冷然(徳島大学准教授)
〔対象〕『適合性原則と私法秩序』(2010年、信山社)
〔理由〕日米の学説・判例を丁寧に分析したうえで、投資にふさわしい能力や財産をもたない者の勧誘を禁止する「適合性原則」につき、投資不適格者を市場から「排除」するルールという従来の捉え方を否定し、その属性等に応じて「支援」するルールとして捉え直す非常に斬新で、意欲的な試みである。

 

■実践賞(1団体)

〔受賞者〕特定非営利活動法人 京都消費者契約ネットワーク
〔理由〕特定非営利活動法人 京都消費者契約ネットワークは、多くの差止請求訴訟を提起してめざましい成果を上げてきた。チャレンジ精神を遺憾なく発揮し、特に、賃貸借や電気通信サービス取引など難しい不当条項の差止請求訴訟のみならず、不当勧誘行為の差止請求訴訟にも先駆的に取り組んできた。また、これら活動を通じ、消費者法学においても極めて重要な問題提起を行い、消費者契約法の解釈・適用における理論的水準を高め、判例の展開を促進した。加えて、110番活動、個別被害の救済等にも精力的に取り組み、大きな功績を上げている。実践面のみならず理論面でも先端的な法実践のフィールドを切り開いてきたパイオニアである。



■特別賞(1名)

〔受賞者〕櫛田寛一(弁護士)
〔理由〕櫛田寛一氏は、1985年頃以降、抵当証券被害の弁護団を複数立ち上げて代表に就任し、1991年の全国抵当証券問題研究会の創設以来、そのリーダーとして抵当証券問題に取り組んできた。また、木津信抵当証券被害者弁護団の事務局長、大和都市管財被害者弁護団の団長として、実践的な被害救済スキームを打ち立てることにより、困難な被害救済活動を成功裡に導いてきた。特に、大和都市管財事件では、国家賠償訴訟を提起して、取引型消費者事件としては初めて国家賠償訴訟で勝訴するといった顕著な成果をあげた。氏は、現在、難病のため入院中であるが、これまでの消費者被害救済への多大な貢献に感謝し、難病に立ち向かう氏への激励の思いを表すために、特別賞を授与することにした。